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面積:300m²
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世田谷の昔ながらの風景が残る住宅街で、既存建物2棟の建替えプロジェクト。向かって左側のオーナー家族が住む2世帯住宅を先につくり、その後右側の計6住戸になる重層長屋を計画した。
敷地内には、古い世田谷の住宅地の面影がある、鬱蒼とした路地が残っており、区画単位で家が密集していて、その間を縫うように敷地内通路が隣地同士で共有されていた。
この未整理な住宅地に魅力を感じ、(2世帯住宅・重層長屋)各住戸へのアプローチと路地を絡めて立体的に展開することで、長屋を住宅地と連なりをもった建築にすることを目指した。それによって、家と住み手はダイレクトに住宅地とつながり、この場所の価値を生活の中で知ることになるだろう。
一般的な重層長屋の多くは地上階に上下階の玄関が並び、どこが自分の部屋か分からないような佇まいをしているが、上階へのアプローチを外部に露出し玄関の向きや位置にバラつきを与えることで、各住戸の存在が際立つ重層長屋を目指した。
重層長屋である賃貸棟とオーナー棟ともに3階建てで、賃貸棟の1階住戸は天井高さのあるロフト付き住戸、2~3階はメゾネット住戸がそれぞれ3戸ずつ入っている。オーナー棟は1階が親世代、2~3階に息子世帯が暮らしている。
既存路地のあった部分は、条例で必要とされる敷地内通路として残した。2棟ともに、少し大きくなったボリューム感を減じるように、分節したり外装仕上げに変化を与えている。特に重層長屋では、自分の部屋がどれか分かるように6つの異なる仕上げとした。
全ての住戸はプランが異なり、二世帯住宅、重層長屋の全ての住戸玄関へのアプローチもバラバラに計画している。
上階住戸へのアプローチを直接行き来はできないが、オーナー棟と賃貸棟ともに互いの気配は感じられるように配置した。建物の間を縫うように階段を配置する事で建物としての風通しと軽やかさを演出している。
2棟は間に敷地境界線があるが、物理的な仕切りを設けないことで一体的に使うことも可能だ。
両建物の外形を雁行させることで、1階から庭に直接面するようにゾーニングし、2階からは庭に向けて道路面からまっすぐつながるように廊下を計画した。
この庭は東京の窮屈な敷地の中に光を落とし込むだけでなく、住戸内と外部環境をつなげることを意図している。
また、大きく跳ね出した玄関上の軒裏から庭に繋がる住戸内天井にかけて同じ材料で仕上げることで路地の様相を生活空間へにじませている。
路地や道路などの外的環境を引き込むように計画することで、視線や行為が閉ざされた空間から解放され、土地と道とのつながりに振る舞いが生まれる。
建物の構成と同じように、ここに住む八世帯は距離感を保ちつつ繋がりを感じる事で集まって住む事の良さを感じられる事だろう。